第2世代iPod解体新書
私は昔、あるお方から第II世代iPodを譲っていただいた事があり、 長い間重宝していたのだが、部品の寿命なのかついに逝ってしまった・・・
壊れる前にもイヤホンジャックのゆるみだとか、ボタン・ホイール部分の異常などがあって、 その都度自分で直さなくてはならなかった。修理にはiPodの分解が不可欠である。 そこで、普段はあまり見ない(見れない?)iPodの内部を写真とともに解説しよう。 役に立つかは知らないけど(笑)。
なお開ける際、iPodはやさしく扱おう。 無理な力を加えたりすると元に戻らなくなってしまったりして、 iPodがかわいそうだぜ。

iPodを開けよう

これが第2世代iPod。第1世代と外見は変わらないが、 内部がかなり変更されているらしい。容量が10GBや20GBのものが出ているようだ。
さて分解方法だが、自分がよく用いた方法は、 細いマイナスドライバーをわずかな隙間に突っ込んで広げる、 というもの。しかしこれは傷が付いてしまう方法なので、 ギター用の硬いピックを使って開けても良い。
図は細いマイナスドライバーをプラスチック部分と金属部分の隙間に入れ、 こじ開けたところ。傷がつきそうだが、上手くいけば全く傷つけずに開ける事ができる。 また,指の力で金属部分を歪めて開ける事も出来るそうだが、自分はできなかった・・・
金属の裏カバーを開けて、iPodが開いた所。金属カバーは内部側にも美しい光沢があるのだ。 両サイドに突起があり、これでiPod本体と連結している。 一方、iPod側は銀色のものが乗っかっているが、これはバッテリーである。 これを外すと内蔵ハードディスクが見えるようになるぞ。
内蔵HDDとバッテリー。HDDは10GBのものだ (最初に見たとき、こんなサイズで10GB入るなんて!と驚いた)。バッテリーは、 中央の表記から判断するとSONY製のものであろう。出力は約1300mA。 電圧は測り忘れた・・・スマソ。
内蔵HDD。メーカーは東芝、型番はMK1003GAL。 この超小型1.8インチHDDは、ノートPC用PCMCIAカード型の外部HDDとして 登場したらしい。実際にPCMCIAカード端子とこのHDD端子を比較すると、 確かに一致した。容量は10GB、回転数は4,200rpm、消費電圧・電流はそれぞれ、 DC3.3V、500mAとなっている。詳細は メーカーのページ に書いてあるぞ。

Welcome to inside

それでは、iPodの内部を見てみよう。 一部、自分で修理・改造してオリジナルとはちょっと違う部分があるが、 基本的には同じだぜ。まずは裏面から見ていこう。
1:FIREWIRE(IEEE1394)ジャック
ここを経由してデータ送受信が行われているんだな。FIREWIREの高速転送技術で転送も速い。
2:FIREWIREコントローラ・チップ
こいつがないとFIREWIREに関する動作ができない。 ちなみにデータ読み書き中にiPodが異常に発熱するのは、 HDD以外にこいつの放熱性が悪いという噂がある。この状態でiPodを起動し、 Macと接続してデータ読み書きをした所、確かに熱かった。フーフー!!
3:システムメモリ
バッファ用であろう。SAMSUNG製。 iPodはHDDから読み出した曲データをここに一時的に溜め込んで、ここから再生する。 そのおかげで、iPodの内蔵HDDに頻繁にアクセスすることが無くなり、 HDDクラッシュを未然に防ぐことを可能にしている。
4:HDD接続フラットケーブル
自分のiPodは、これが断線してしまって故障してしまった。 分解してみると、基盤と密着してそうに見えるが、実は取り外しが可能なのだ。 裏面に小さいソケットがあって、そこを垂直に抜き取ると外せる。 なお、本体のプラスティック部分(白い枠)から外してからじゃないと取り外せない。
5:イヤホンジャック
下図はオリジナルのジャックで、上の写真は修理で交換したジャック。 標準のジャックより差し込みが頑丈になった。 iPodを使い始めた頃は何も異常はなかったが、しばらく使い続けていると ジャックの差し込みがゆるくなり、音が途切れたりすることもあった。 中を開けて確かめてみると、基盤からジャックが外れていた。 直そうと思っても、iPodのジャックだけ売っている店なんぞどこにもない。 そこで秋葉原で発見した、一番純正に近かったステレオジャックを自力で取り付けている。
6:出力用コンデンサ
オリジナルは、下図のようなチップになっている。上の図ではケーブルが繋がっていて、 青紫のコンデンサ(OS-CON)に接続されている。 この「コンデンサ」の性能で音質は左右される。チップタイプではかすれた音になってしまう (タンタル・チップコンデンサ、150μF)傾向にあるようだ。
OS-CONやBLACK GATE、ミューズなどのオーディオに定評のあるコンデンサに交換してやれば、 音質が向上する。交換後聞き比べてみると、低音域が結構変わる事がわかった。 この技は意外と有名(?)なので、他のサイトを参考にして欲しい。
7:CPU
PortalPlayerというメーカーのチップで、MP3のデコードなどの様々な役割を果たしている。 このCPUのコードや構造を解析すれば、独自のアプリケーションを作る事が可能らしい。 80~100MHzくらいで動作する。最近では、iPodでLinuxを動かす「iPod Linux」 なるものが出現しているぞ。
8:ホールドスイッチ
この超小さなつまみに、プラスティックのホールドスイッチがはまって 動かせるようになる。スイッチの金属部分はアースに繋がっている。
9:バッテリ接続用端子
ここにバッテリのケーブルを繋いで電源を供給するのだ。 とても小さいので、無理して引き抜いたり押し込んだりすると、すぐに折れてしまうぞ。
さて、この基盤は取り外せる。普通は外す必要はないが、この際だから全部外してしまった。 外し方には、ちょっと削ったり専用の工具が必要になるが、決して難しいものではないぞ。
まず、中央に4つの白い点があるだろう。この図は既に削ってしまったものだが、 本来はリベットのように熱着固定が施されてある。カッターナイフかニッパーで削ろう。 基盤は絶対に傷つけるなよ!断線する恐れがある。。。
図の赤丸の付いた場所に固定ネジがあるので、これを取り外すのだが、 「トルクスドライバー」という先端が星形の特殊ドライバーがないと回せない・・・ が!なんと模型用などの小型六角レンチでも回せるのだ。自分が良く使ったのは1.30mmのレンチ。 ネジ穴は以外ともろいので、無理に力を入れて回さないようにしよう。
これで取り外す準備は完了だ。両脇から出ている銀色の帯を持ち上げると上手く外れる。
そして基盤を取り外せば、表面の登場だ。
1:圧電スピーカ
iPod操作の「クリック音」は、ここから出る。 クリック音はどこから鳴っているんだろう?と疑問に思っていたが、 こんな部品からだとは予想もしなかった。
2:フラッシュROM
これは推測である。メーカーはSHARP製。もしフラッシュROMなら、 iPodのファームウェアデータはここに格納されるのだろう。
3:フォト・トランジスタ
スクロールホイールの動きを読み取るものだと思われる。 ホイール部分を分解してみると分かるが、裏側にはたくさんの切れ目が入った部分があり、 その切れ目部分はフォトトランジスタの間を通る。ボール式マウスと同じ機構を取っているのだ。
4:液晶パネル
最近のiPodは、カラー表示ができる液晶パネルが搭載されている。 旧世代はモノクロ1ビットのみの表現力だが、それもまた味があって良い。 またこの液晶パネルは外せるが、中には黒い絶縁テープが貼ってあるだけであった。
5:ブレーキ・ゴム
これはオリジナルにはついていないものだ。 昔、電車に乗っていたときにちょっとの衝撃でホイールが回ってしまい、 音量がMAXになる事があった。このゴムをこの位置に張り付けてやると、 スクロールホイールの回り方が硬くなり、勝手にホイールが回らなくなるぞ。
6:アクションスイッチ
全部で5個。このスイッチの上にプラスティックのボタンが被さる。 意外と壊れやすいので、ボタンが反応しづらくなったら、このパーツを疑おう。 しかし自分で修理しようとしても、この超小型スイッチに代われるパーツは どこにも売ってないので、自作スイッチとか作らない限りは難しいだろう (素直にApple修理サービスに頼もう)。
7:HDDコネクタジャック
垂直に引き抜くと外れる。フラットケーブルを引っ張らない事!ケーブルが剥がれて、 取り返しの付かないことになりかねない。あと、HDDのアクセスに異常が起きたら、 これを強く押し込んでみよう。単にここが外れているだけかも知れないからね。
8:ホールドスイッチ
この超小さなつまみに、プラスティックのホールドスイッチがはまって 動かせるようになる。スイッチの金属部分はアースに繋がっている。
9:液晶パネル用ジャック
垂直に引き抜くと外れる。フラットケーブルなど精密部品も結構あるので、 あまり外さない方がいいだろう。
以上が、内部構造の全てである。

Inside of Scroll Wheel

スクロールホイールも面白い構造をしている。分解は簡単、 ガムテープなどをホイール部分にべたっと張り付け、引きはがすと簡単に外れる。 本体を分解したならもう既に外れているかもしれない。
スクロールホイールはなぜ、あんなに滑らかに動くのだろうか? その秘密は内蔵のボールベアリング。こいつがホイール部分ときっちりはまって回転するのだ。 裏側はこんな感じだ。 中央のボタンは、内部スイッチの上に来るようになっている。 なお図の右下の小粒は、内部スイッチを押すためのパーツ。

バッテリーの正体

バッテリーケーブル付近は特殊なシートが接着されていて中が見えない。 だがバッテリケーブルがちょん切れてしまい、再配線するときがあって、 修理箇所を透明なテープで保護したので今は中を見る事ができる。
このバッテリーには安全回路が設けてあり、バッテリーの過放電・過充電を阻止している。 あと、配線が切れてしまって交換することになったら、 ヨリ線コードはやめておいたほうがよい。ハンダメッキしたヨリ線は太くなるので、 電源ジャックへの組み付けが非常に困難になってしまうぞ。

備考

iPodの中身は以上である。しかしこれは第2世代であって、 新世代機種はもっと複雑な構造になっているそうだ。 タッチ式ホイール・ボタン、カラー液晶、DOCKジャック・・・ さらにこれより小型の「iPod Mini」も出現して、精密度が増している。